心不全を防ぎましょう。心不全パンデミックとは
心不全とはどのような状態か
心臓は体が必要とする血液を全身に送り出すポンプの役割をしています。何らかの原因により心臓がポンプとしての役割を果たせなくなった状態が心不全です。進行した心不全になると息切れやむくみを生じ、治療をして一時的に良くなっても再び悪化を繰り返すという特徴があり、完全に回復することはありません。今後、患者さんの大幅な増加が予測されており、感染症の大流行になぞらえて心不全パンデミックと呼ばれ、大きな問題となっています。
心不全患者が増加している背景と主な原因
心不全が増えている大きな原因として高齢化社会があります。心臓も加齢により機能が低下するため、高齢になるほど心不全のリスクは高まります。また、食生活の欧米化や運動不足などの生活習慣の変化により、心不全の引き金となる生活習慣病が増えていることも要因です。近年の医学進歩によって心筋梗塞や弁膜症などの病気で命を落とすケースは減りましたが、心臓へのダメージは蓄積されるため、将来的に心不全を発症する方が増えています。
| 加齢による影響 | 心臓のポンプ機能が徐々に低下し、心不全を発症しやすくなります。 |
|---|---|
| 生活習慣の変化 | 高血圧、糖尿病、肥満など、心臓に負担をかける要因が増加しています。 |
| 心疾患の既往 | 心筋梗塞や弁膜症の治療後も、心機能が低下し続ける場合があります。 |
重症度を把握するためのステージ分類と進行の仕組み
日本循環器学会のガイドラインでは、心不全の進行度を4つのステージに分類しています。重要な点は、一度ステージCに進むと前の状態へは戻れないという不可逆的な性質です。そのため、いかに早い段階で適切な治療を行い、発症を未然に防ぐかが非常に重要となります。
| ステージA | 心不全予備軍。高血圧や糖尿病、肥満などリスクはあるが、心臓の構造的異常や症状はない状態。 |
|---|---|
| ステージB | 心不全の発症前。症状はないが、弁膜症や不整脈などの異常がある、または血液検査(BNP等)の数値が高い状態。 |
| ステージC | 心不全を発症。心臓の構造的異常に加え、息切れやむくみなどの症状が現れ、治療を受けている状態。 |
| ステージD | 難治性心不全。治療を継続しても効果が乏しく、さらに進行してしまった状態。 |
将来の心不全を防ぐための予防と管理ポイント
心不全を予防するには、まずステージAの段階でリスク要因をしっかり管理することが大切です。日常生活の中で以下のポイントに注意し、必要に応じて適切なお薬を服用しましょう。
| 減塩の徹底 | 高血圧の悪化を防ぎ、心臓への負担を軽減します。 |
|---|---|
| 食生活の改善 | 糖尿病の進行や肥満を防ぐため、間食を控えバランスの良い食事を心がけます。 |
| 適度な運動 | 運動不足を解消し適正体重を維持することで、心機能を健やかに保ちます。 |
| 定期的な検査 | 血圧や血糖値、心不全の指標となる血液検査数値を把握しましょう。 |
心不全の早期発見に重要な血液検査(BNP・NT-proBNP)
心不全の診断、重症度を調べる血液検査にBNPやNT-proBNPという項目があります。BNPで35以上、NT-proBNPで125以上あればステージB以上であり、慎重な経過観察や場合によっては循環器科での専門的な検査を要します。心不全学会からの心不全予防ステートメントでは、ステージAの方は少なくとも年1回はBNPかNT-proBNPの測定が推奨されています。
当院における心不全予防と早期対策の取り組み
当院にも高血圧や糖尿病などをお持ちの心不全ステージAの方が多く通院されています。適切な治療に加えて、必要に応じてBNPやNT-proBNPを測定し心不全のリスクを評価しています。症状、胸部レントゲン、心電図検査などの結果と合わせて、さらなる精密検査が必要と判断した場合には近隣の総合病院にご紹介しております。心不全は一度発症してしまうと完全に治ることはありません。いかに予防するかが大切です。当院でもさらなる予防に力を入れてまいります。
参考資料 心不全予防に関するステートメント 2025改訂版 心不全診療ガイドライン
