睡眠時無呼吸症候群の意外な一面、無呼吸だけではありません
夜間に呼吸が止まってしまう睡眠時無呼吸症候群は、昼間の眠気やだるさを引き起こすだけでなく、心臓などの全身疾患に大きな影響を及ぼします。今回は、睡眠時無呼吸症候群に伴う主な合併症について詳しくご紹介いたします。
高血圧と睡眠時無呼吸症候群の深い関係
高血圧と睡眠時無呼吸症候群には非常に密接な関係があります。統計によると、高血圧患者さんの約30%に睡眠時無呼吸症候群が認められます。特に、降圧薬を3種類以上服用しても十分に血圧が下がらない治療抵抗性高血圧の方では、その約70%に睡眠時無呼吸症候群の合併が見られるという報告もあります。
睡眠中に無呼吸状態になると、体内の酸素が不足し、交感神経が過剰に活性化されます。その結果、血管が収縮したり「カテコラミン」という物質が増加したりすることで、血圧が上昇します。この他にも、血管への酸化ストレスなど、さまざまな要因が重なり合って高血圧を引き起こします。
心不全を悪化させる負のスパイラル
睡眠時無呼吸症候群は心不全の発症や進行に関わりますが、反対に心不全が睡眠時無呼吸症候群を悪化させることもあり、両者は悪循環の関係にあります。
夜間の無呼吸による交感神経の活性化は、心臓に過度な負担をかけ、心不全を誘発する原因となります。また、心不全になると体に余分な水分が溜まる「むくみ」が生じやすくなります。夜間に横になるとのどの周囲のむくみが悪化し、空気の通り道が狭くなるため、さらに無呼吸が深刻化します。睡眠時無呼吸症候群から心不全を招き、その心不全がさらなる無呼吸を呼ぶという連鎖には細心の注意が必要です。
心筋梗塞や不整脈などの心疾患リスク
夜間の無呼吸によって交感神経が活発になると、不整脈が発生しやすくなります。また、無呼吸に伴う低酸素状態が慢性的に続くと、心臓の血管がダメージを受け、動脈硬化が進行しやすくなります。
これが引き金となり、心筋梗塞や狭心症といった深刻な心臓の病気につながる恐れがあります。前述の通り、睡眠時無呼吸症候群は高血圧の原因にもなるため、高血圧そのものが心疾患のリスクをさらに高めるという多角的な危険性を孕んでいます。
糖尿病とインスリン抵抗性
糖尿病と睡眠時無呼吸症候群は、いずれも肥満傾向の方に多く見られますが、最近の研究では肥満の有無に関わらず、睡眠時無呼吸症候群そのものが糖尿病発症の独立したリスクになると考えられています。
通常、膵臓から分泌される「インスリン」というホルモンが血糖値を下げますが、睡眠時無呼吸症候群があると、このインスリンが効きにくくなるインスリン抵抗性が生じる可能性が示唆されています。血糖コントロールが不安定になることで、糖尿病の悪化を招くリスクがあるのです。
CPAP療法の仕組みと合併症への改善効果
睡眠時無呼吸症候群の代表的な治療法にCPAP療法(持続陽圧呼吸療法)があります。これは、専用のマスクを通じて鼻から空気を送り込み、その圧力で気道の閉塞を防ぐ治療法です。中等症から重症の患者さんに対して行われ、いびきや日中の眠気の大幅な改善が期待できます。合併症への具体的な効果は以下の通りです。
| 高血圧 | CPAP療法を継続することで、血圧の低下が得られることが証明されています。 |
|---|---|
| 心疾患 | 心不全や心筋梗塞などの発症リスクを低下させる可能性があると報告されています。 |
| 糖尿病 | 直接的な改善データはまだ不十分ですが、合併症の予防という観点では大きなメリットがあります。 |
なお、重症の心不全を合併している患者さんの場合には、ASVという特殊な人工呼吸器を自宅で使用することもあります。
早期発見と受診の重要性
睡眠時無呼吸症候群は、単にいびきがうるさい、あるいは日中に眠いといった表面的な問題だけではありません。実際には高血圧や心臓病といった命に関わる病気と深く関わっています。
ご家族からいびきを指摘されたり、日中の強い眠気を感じたりするなど、少しでも睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合には、早めに医療機関を受診して相談することをお勧めします。
