高血圧治療ガイドライン2025が発刊されました。
日本高血圧学会による「高血圧治療ガイドライン」が2025年8月に改訂されました。盛りだくさんの内容になっておりますが、重要と思われる項目をいくつか私見も交えてご紹介いたします。

なぜ血圧管理が必要なのか?治療の目的と重要性
高血圧の治療目的は、高血圧によって生じる脳卒中や心臓病などの発生を抑えること、そして患者さんが健康で元気に生活できるようにすることです。日常の診察で「血圧の薬を飲み始めたら、もう一生やめられないから飲みたくない」とおっしゃる方がいらっしゃいます。必ずしも内服を中止できないわけではありませんが、お薬が必要なほどの高血圧であれば、継続が必要なケースが多いのは事実です。しかし、血圧治療の最終目標は「内服すること」自体ではなく、血圧を最適な値に維持して脳心血管病を防ぐことにあります。その目的を達成するために必要であれば、積極的にお薬を活用すべきだといえます。
高血圧の診断基準:数値の目安と注意点
高血圧の診断は、一度の測定ではなく複数回の測定結果に基づいて行われます。診断基準は以下の通りです。
| 測定場所 | 高血圧の基準値 |
|---|---|
| 診察室血圧 | 140/90mmHg以上 |
| 家庭血圧 | 135/85mmHg以上 |
診察室と自宅での血圧に大きな差がある場合には、自宅での血圧を基準とします。また、120〜139/80〜89mmHgの範囲は「高血圧」とは診断されませんが、将来の発症リスクを抑えるため、塩分の摂り過ぎや運動不足などの改善が推奨されます。
血圧治療の流れ:診断から治療開始まで
緊急を要する合併症がない場合、まずは慎重に血圧の状態を把握し、個々のリスクに応じた治療方針を決定します。
-
血圧値の正確な確認
体調不良や緊張による一過性の血圧上昇ではないかを確認するため、家庭での測定や複数回の通院による診察室血圧をチェックします。 -
リスク要因の評価
脳心血管病のリスク要因(高齢、喫煙、糖尿病、慢性腎臓病など)がどれくらいあるかを確認し、高リスク・中リスク・低リスクに分類します。 -
治療方針の決定と開始
低〜中リスクならまずは生活習慣の改善を行い、改善がなければ内服を検討します。高リスクの場合は生活習慣の改善と同時に内服治療の開始を検討します。
脳心血管病のリスク因子一覧
以下の項目に当てはまる数が多いほど、慎重な血圧管理が求められます。
- 高齢(65歳以上)
- 男性
- 喫煙習慣がある
- 脂質異常症(コレステロール値の異常)
- 糖尿病
- 脳心血管病の既往歴
- 心房細動
- タンパク尿を伴う慢性腎臓病
新しい血圧治療の目標値:原則130/80mmHg未満へ
前回の2019年ガイドラインでは年齢などにより目標値が分かれていましたが、最新の臨床試験の結果を反映し、今回の改訂では原則として年齢に関わらず以下の数値を目標とすることになりました。
- 診察室血圧:130/80mmHg未満
- 家庭血圧:125/75mmHg未満
ただし、血圧を下げすぎることでふらつきや転倒、腎機能の低下などの有害事象が生じる可能性があるため、個々の状態に合わせた微調整が重要です。
生活習慣の改善で気をつけるべきポイント
血圧管理において、生活習慣の修正は薬物療法と同じくらい重要です。以下の項目を意識しましょう。
| 減塩 | 1日6g未満を目標にします。高血圧治療の基本です。 |
|---|---|
| カリウム摂取 | 野菜や果物に多く含まれます。ただし、慢性腎臓病の方は制限が必要な場合があるため主治医に相談してください。 |
| 適正体重の維持 | 体重を1kg減らすと上の血圧が約1mmHg下がるとされています。3%以上の減量で有意な効果が期待できます。 |
| 運動 | 有酸素運動と筋力トレーニングを組み合わせると効率的です。筋トレ時は息を止めないように注意してください。 |
| 節酒・禁煙 | 血管の健康を守るために不可欠です。 |
その他の日常生活での注意点
急激な温度変化を避けるためにお部屋を寒くしないこと、十分な睡眠時間を確保すること、便秘の予防、そしてストレスと上手に向き合うことも血圧安定につながります。
ガイドライン改訂にあたってのまとめ
今回の2025年ガイドライン改訂により、多くの患者さんで目指すべき目標値が130/80mmHg未満(家庭では125/75mmHg未満)と明確化されました。また、まだ高血圧ではない段階の方も、将来の病気を防ぐために減塩などの食生活の見直しが大切です。当院では最新のガイドラインに基づきつつ、患者さん一人ひとりのライフスタイルや体調に合わせた最適な治療を提供できるよう努めてまいります。
(この記事は「高血圧管理・治療ガイドライン2025」を参考に作成しました)
