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糖尿病とスティグマ

[2022.03.27]

最近糖尿病の講演会などでスティグマという言葉をよく聞くようになりました。また学会による糖尿病治療の目標にもスティグマを取り除くという項目があります。どういう意味でしょうか?

糖尿病への偏見

糖尿病は1型と2型に大きく分けられます。インスリンという血糖を下げるホルモンは膵臓から分泌されますが、1型は膵臓のインスリンを分泌する細胞が何らかの原因で壊れてしまいインスリン不足のため血糖値が上がってしまいます。2型はもともと膵臓からインスリンが出にくい、あるいはインスリンが体に作用しにくいなどの遺伝的要素に食生活や運動不足の問題が加わり発症します。1型は何らかの原因で膵臓の一部が壊れて発症するため予防することは困難です。2型においてもインスリンの分泌不足や効果が出にくいといった遺伝的要因が関与するため、同じような生活をしていても糖尿病になる方もいればならない方もいます。このように糖尿病の発症には自分の力ではどうしようもない要因が関与しています。しかし糖尿病患者さんには「糖尿病になったのは自己管理ができていないため」、「食べすぎているから」などの偏見が存在します。

スティグマとは?

スティグマとは不名誉な烙印を意味し、糖尿病におけるスティグマとは糖尿病患者さんによくないレッテルを貼ってしまうことを指します。

スティグマには一般社会から受けるもの(社会的スティグマ)、医療従事者からうけるもの(乖離的スティグマ)、自分自身で感じてしまうもの(セルフスティグマ)があります。社会的スティグマは前述したとおり、糖尿病への不十分な理解により一般社会から偏見の目で見られてしまうケースです。

医療従事者は糖尿病の方を治療で良くしたいとの気持ちがあります。しかし時として医療従事者は糖尿病患者さんは間食をやめるべき、定期的に運動をするべき、医師が処方した薬は有無を言わず内服するべき、など勝手に模範的な糖尿病患者さん像を頭で作り上げてしまいがちです。しかし患者さんにはそれぞれに生活があり、社会的事情、経済的事情、物事に対する価値観もさまざまです。患者さんにとっては治療はあくまで人生のごく一部にすぎず、仕事や育児が忙しくて糖尿病治療どころではない、金銭的な理由でたくさん薬は飲みたくない、など患者さんにも医師に言いたいことはあると思います。この医師の理想像と患者さんの現実にギャップ(乖離)が生じると「しっかり治療を受けなさい」、「間食をやめなさい」などとつい医療者側は患者さんに一方的な要求をしてしまうことがあります。患者さんとしては責められた、叱られたと感じてしまい、さらに治療に後ろ向きになってしまう場合があります。このような一般社会や医療従事者からの差別的な扱い、叱責をうけた結果、自分自身に否定的な考えをもってしまうことがセルフスティグマです。このようなスティグマをうけることにより糖尿病の放置、通院治療の中断、しいては糖尿病の重症化につながる恐れがあります。

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糖尿病という病名

糖尿病という名前自体も正確に病態を現わしているものではありません。糖尿病の診断には血液検査で血糖値やHbA1c(平均血糖値の指標)を測定します。尿検査で尿糖を認めるか認めないかは診断には関係ありませんし、糖尿病患者さんでも尿糖を認めない方も多いです。ちなみに英語では糖尿病はDiabetes Mellitus といい「尿」という語句は入っていません。尿という言葉がつくことでどうしても疾患に対してネガティブなイメージを持つ方もいると思います。

おわりに

糖尿病への偏見、スティグマを減らすためには糖尿病への正しい知識の提供や、個々の患者さんに沿った治療の提供などが必要と考えます。まだまだ至らない点は多いと思いますが日々これらのことを心がけて診療してまいります。

 

 

 

 

 

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