花粉症の薬は早めに使った方が効果がありますか?
年が変わっても新型コロナウイルスの勢いが止まりません。ワクチン接種の話題も増えてきていますが、もうしばらくは個人個人で感染予防に注意していく必要があります。幸いにして手洗い、マスクが習慣化したせいか、インフルエンザウイルスは今シーズンは驚くほどに激減しています。しかしもうしばらくすると、今度はやっかいな花粉症のシーズンがやってきます。よく花粉症の薬は早めに使用した方がよいのかと聞かれることがあり、今回調べてみました。
花粉症の治療薬について
その前に花粉症の主な治療薬についてみてみましょう。
花粉症に対しては飲み薬では第2世代抗ヒスタミン薬が主役となります。また飲み薬以外では鼻炎症状に対して鼻噴霧用ステロイド薬がよく使われます。
花粉症をもっている場合、スギ花粉などの原因物質が体に入ると、体内の肥満細胞という細胞からヒスタミンという物質が出てくしゃみ、鼻水などの症状を引き起こします。抗ヒスタミン薬はこのヒスタミンの作用をブロックすることで症状を和らげるお薬です。
抗ヒスタミン薬が開発された初期の薬は強い眠気、口の渇き、便秘なども強く出ました(第一世代抗ヒスタミン薬と呼ばれます)。その後、眠気などの副作用は軽くして効果だけが強くなった第2世代抗ヒスタミン薬が開発され、現在多くの種類が発売されています。具体的にいうとアレグラ®、アレロック®、クラリチン®、ザイザル®、デザレックス®、ビラノア®などで聞いたことがある方も多いと思います。
ステロイド薬はアレルギーなどを強力に抑える薬ですが、副作用が問題になります。鼻噴霧用ステロイド薬は、飲み薬のステロイド薬と違い鼻に噴霧するため、全身の副作用は出ません。鼻に直接ステロイドが届くため、鼻炎症状を抑える高い効果も得られます。
ではこれらのお薬は花粉症の症状が出る前に使うとさらに効果が期待できるのでしょうか?
花粉症に対する初期療法について
結論からいいますと、これらのお薬は花粉症の症状が出る前に使うことで、花粉症ピーク時の症状をさらに抑えることが期待できます。症状が出る前に早めに使用することを初期療法といいます。
初期療法の有効性に関するデータをご紹介します。
2003年から2005年までに17都道府県の83の病院において1,611の患者さんが①初期治療群(花粉飛散時期の7日後までに治療を開始)、➁発症後治療群(症状が出てから治療を開始)に分けられ、症状がどうなったかを調べました。結果としては初期治療群のほうが、くしゃみ、鼻みず、鼻づまりのいずれも症状が軽くて済んだ結果でした[1]。また鼻噴霧用ステロイド薬においても初期療法の有効性を示すデータも出ています。
昨年に作成された鼻アレルギー診療ガイドライン2020年版においても、例年強い花粉症の症状がある場合には初期療法が勧められています。初期療法の開始時期については花粉症飛散予測日または症状が少しでも出た時点で第2世代抗ヒスタミン薬や鼻噴霧用ステロイド薬を使用すると記載されています[2]。
おすすめの抗ヒスタミン薬は何ですか?
この質問もよく患者さんから受けます。結論からいいますとはっきりとした答えはありません。現在多くのメーカーから第2世代抗ヒスタミン薬が発売されています。内服回数(1日1回タイプ、1日2回タイプ、飲み薬ではなく貼り薬タイプもあります)、食事との関係(薬によっては空腹時に内服しないといけないものがあります)、薬代(種類によっては薬代が安いジェネリック医薬品もあります)、眠気の程度(全体的に第2世代抗ヒスタミン薬は眠気が少ないですが、同じ第2世代でもやや眠気には差があります)、症状の違い(鼻水がつらいのか鼻づまりがつらいのか)、投与量を増やせるか(薬によっては効果が弱い場合には投与量の増量が認められています)などを考えてなるべく患者さんの要望やライフスタイルに合いそうなものを選びます。お気に入りの薬があり毎年飲んでいる場合には特に問題ありませんが、初めて花粉症のお薬を飲む場合や、今のお薬から変えたい場合には主治医の先生とよく相談してみてください。
お住まいの地域の花粉飛散予測日を確認しましょう
日本気象協会のホームページにスギ花粉の飛散開始時期がのっています。福島県は2月中旬ころのようです。また花粉の量は例年に比べると少ないようですが、去年よりは多くなるようです。
毎年花粉症のつらい症状が出る方は花粉飛散予測日をこまめに確認し、今年は早めのお薬の使用を考えてみてはいかがでしょうか。
参考文献
[1] 藤枝重治ほか. スギ花粉症における第2世代抗ヒスタミン薬の臨床効果 多施設、3カ年による初期療法と発症後治療の検討. 日鼻誌 2007 ; 46 : 18-28
[2] 鼻アレルギー診療ガイドライン 2020年度版(改訂第9版)