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息切れの原因にはどのようなものがありますか。

[2020.08.12]

当院は呼吸器内科を標榜しており、息切れを訴えて来院される方が多いです。今回は息切れを認める場合に、どういった考えで診断をしていくかをお話しようと思います。通常は問診(患者さんからの症状などの聞き取り)、診察、必要に応じて検査の順番で行います。なお息切れ(医学用語では呼吸困難といいます)と呼吸不全は厳密には異なります。呼吸困難とは患者さんが息が苦しいと感じることです(呼吸困難があるかどうか決めるのは患者さんご自身)、呼吸不全とは症状の有無に関わらず体の酸素濃度が一定以下になっている状態(決めるのは患者さんではなく酸素の数値)を指します。息切れの訴えがある場合には手の指にモニターを付けてまず酸素濃度を測定します。体の酸素濃度が低い呼吸不全になっている場合には緊急事態ですのでゆっくり問診や診察を行なっている時間はありません。問診や診察を同時に行なったり、いきなり検査をするなど臨機応変な対応をします。酸素濃度が問題ない場合には落ち着いて以下のように診断をしていきます。

〇問診

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息切れに関わらず、内科の場合には問診が非常に大切です。息切れの問診でまず重要なのは、息切れが「いつから起きているか」です。急に起きたのか、数日から1週間程度前からなのか、1か月以上前からか、などでまずざっくり診断のあたりをつけます。急激な場合には肺の一部に穴が開いて空気漏れを起こす気胸などが、数日から1週間程度なら肺炎や気管支炎などの感染症や心臓が弱っておこる心不全など、ある程度長い期間なら慢性閉塞性肺疾患(COPD)などが頭に浮かびます。

息切れ以外に症状があるかどうかも重要です。発熱があれば肺炎などの感染症、胸痛があれば気胸や胸膜炎、心筋梗塞に合併した心不全などが考えられます。咳を伴う場合には肺炎や肺がんなども疑われます。症状が出る時間帯を聞くのも大切です。夜間や明け方に苦しくなる場合には気管支ぜんそくや心不全が疑われます。

喫煙歴も重要です。ヘビースモーカーの方であればCOPDや肺がんの可能性がでてきます。気管支ぜんそくの方は花粉症などアレルギーを持っていることも多く、アレルギーの有無も聞きます。薬の副作用で肺に炎症が起こる場合もあるので常用薬の有無、最近なにか新しく薬を飲み始めたか、漢方薬やサプリメントも買ったりして飲んでないか聞きます。

貧血も息切れの原因になりますので、立ちくらみがないかなども重要です。甲状腺機能亢進症という甲状腺ホルモンが出すぎる病気も息切れをきたします。慢性的な下痢や体重減少、動悸なども伴う場合にはこの病気も疑います。

問診だけでだいたい分かる場合もあれば、よく分からない場合もありますので次に診察を行ないます。

〇診察

まずは聴診です。息を吐くときにヒューヒューゼーゼーと音がすれば気管支ぜんそくか心不全の可能性が高いです。背中の下側の聴診で息を吸うときにパリパリと音がする場合には間質性肺炎という肺が固くなる特殊な肺炎が疑われます。心臓の音に雑音がある場合には心臓弁膜症が疑われます。右か左のどっちかで呼吸の音が弱い場合には気胸や胸水、無気肺(肺がんなどのため肺がつぶれている状態)が疑われます。COPDでは進行すると両方の肺とも炎症で構造が壊れるので、両方の呼吸音が弱くなります。

心不全の場合は心臓が弱って体に水分が貯まるので肺に水が貯まるほかに足がむくみます。足のむくみは見ただけではむくんでないようにみえるので要注意です。親指の腹で足を圧迫しへっこんだまま跡がつけばむくみありと判断します。同じく心不全の場合には首の静脈も水分が多いためぱんぱんに張ることがあるので確認します。

肺がんの場合には首や鎖骨の上のリンパ節に転移して腫れることがありますので触って確認します。貧血がないかまぶたの色もみます。

〇検査

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検査は問診と診察の結果により必要と判断した場合に行ないます。当院で行える主な検査は以下の通りです。

①胸部レントゲン検査

肺炎や肺がんを疑う場合には白い影が肺にないか調べます。高齢者や脱水を伴っている場合には実際には肺炎であってもレントゲンでは肺炎の影が出ないこともあり注意を要します。心不全の場合には心臓が拡大していたり肺の中がむくんでいる影や胸水を認めます。気胸はレントゲンを行なえばすぐに診断がつきます。COPDは早期であればレントゲンは異常はありませんが、すでにかなり進行している場合には過膨張といって肺が全体的に膨れている所見を認めることがあります。

➁血液検査

肺炎などの感染症では炎症反応という項目が上昇します。心不全ではBNPという数値が高くなるので診断に役立ちます。肺の血管に血の塊が詰まる肺血栓塞栓症という病気ではD-ダイマーという数値が上がってないかが重要です。甲状腺機能亢進症が疑われる場合には甲状腺ホルモンなどを測定します。

③その他の検査

気管支ぜんそくが疑われる場合には呼気NO検査、COPDが疑われる場合には呼吸機能検査が役に立ちます。心筋梗塞や不整脈が疑われる場合には心電図が必須です。

これでも原因がよく分からない場合や、さらに高度な検査が必要な場合には近隣の総合病院へご紹介し診察を受けていただきます。

以上のながれで診断を行います。息切れをきたす主な原因を下に示します。肺高血圧とは心臓から肺へ流れる肺動脈という血管の圧が高くなる病気です。肺に病気があって2次的になる場合と、原因不明や遺伝的になる場合もあります。頻度は低いですが、診断が難しい疾患です。筋肉の病気でも呼吸に関係する筋肉の力が弱くなるため息切れをすることがあります。診察や検査にてまったく異常がない場合には心身症なども考えます。

 

息切れといっても原因となる疾患は色々あります。息切れを自覚する場合には早めに医療機関を受診し診察を受けるようにしましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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