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高血圧の治療中ですが、なかなか下がりません。なぜでしょうか?

[2021.08.08]

「高血圧で薬も飲んでいるのになかなか血圧が下がらない」という場合が時々あります。何が原因なのでしょうか?今回は治療を受けても血圧が下がらない場合の原因について考えてみようと思います。

血圧が下がらない原因について

高血圧で治療を受けていても血圧が下がらない場合にはいくつかの原因が考えれます。

①減塩を中心とした食事療法や生活改善が上手くいっていない場合

➁薬の効果が弱いのにそのままとなっている場合

③加齢や生活習慣以外に高血圧の原因がある場合

などが考えられます、ひとつずつ考えていきましょう。

減塩を中心とした食事療法や生活改善が上手くいっていない場合

高血圧に対する食事について一番気を付けるのは塩分の摂り過ぎです。高血圧治療ガイドライン2019では1日の塩分摂取目標は6g未満とされています。私たちは平均どのくらいの塩分を摂っているのでしょうか。令和元年国民健康・栄養調査では食塩摂取量平均値は男性で10.1g、女性で9.3gとなっています。年齢別にみると男女ともに60歳台の方が一番摂取平均値が高くなっています。普段の外来でも「塩分を摂り過ぎてはいませんか」と患者さんに聞くことも多いですが、患者さんのほうでも実際に自分は塩分を摂り過ぎているのか、普通くらいなのか分からないことがほとんどだと思います。尿検査から1日の塩分摂取量を計算して測定することができます。自分では塩分を摂っていないつもりでも、実際には尿を調べると塩分摂取量が多かったケースもありますので、血圧が下がらない方は一度検査を受けてみることをおすすめします。またアンケート形式のあなたの塩分チェックシート(監修 社会医療法人製鉄記念八幡病院 理事長 土橋卓也先生)も塩分を摂り過ぎていないか調べるのに役に立ちます。簡単ですので一度調べてみることをおすすめします。現在は食品の栄養成分表示に食塩相当量が記載されています。買ったり食べたりする前に確認することで、塩分の摂り過ぎを抑えることができると思いますのでぜひ確認してみてください。

野菜や果物に多く含まれるカリウムには血圧を下げる効果が期待できますので積極的に摂ることがおすすめです。ただし果物は血糖値を上げますので糖尿病をお持ちの方、血糖が高めの方は必ずどのくらいまで食べていいいかを主治医の先生に確認しましょう。腎臓の悪い方もカリウムの摂り過ぎは避けたほうがよい場合があるので主治医の先生に必ず確認をお願いします。

その他に生活で気を付けることとしては適度な運動をする、体重をなるべく適正に保つ、タバコを吸っているかたはできれば禁煙していただく、睡眠をしっかりとる、冬場は暖房をうまく使い部屋をあたたかく保つなどが挙げられます。

薬の効果が弱いのにそのままとなっている場合

高血圧治療の基本は上記のような生活習慣の改善ですが、それだけでは良くならない場合には薬での治療も行います。高血圧の治療薬(降圧薬)には色々な種類がありますが、まずは1種類の薬から使うことが基本です。それでも十分下がらない場合には他の種類の薬を追加したり、薬の量を増やしたりします。降圧薬1剤で大体10~15くらい血圧を下げることができます。となると治療前の血圧が高ければ高いほど、十分に血圧を下げるのに必要な降圧薬の種類は増える可能性があります。しかし実際には本当は今の降圧薬だけでは十分に血圧が下がらず、薬を増やした方がいいのにずーっと同じままで経過していることがあります、なぜでしょうか。ひとつは患者さんのほうから薬を増やすのはもうちょっと待ってほしいとの希望があり、そのままとなるケースです。誰でも飲む薬の数は少ない方が良いと思っているはずで、気持ちは十分に分かります。金銭面の負担も増えることになり、そういうことはなかなか医師には言いづらいと思います。また実は処方する医師のほうも薬を増やすのはためらうことがあります。薬を増やすのであれば患者さんにその理由や副作用のリスクを説明しなければならず、いつもの診察より時間がかかります。忙しい外来で診察まちのカルテが山積みになっているとついつい今回はこのまま様子をみましょう、となることがあります。

最近になり「クリニカルイナーシャ」という言葉をよく学会や研究会で聞くことが多くなりました。クリニカル=臨床の、イナーシャ=惰性、で直訳すると臨床的な惰性になります。糖尿病や高血圧治療において血糖値や血圧が治療目標の値になっていないのに治療が強化されず、だらだらと同じ治療が続いてる状態を指しています。これには先に述べたように患者さん側の要因と医療側の要因があります。これを防ぐには患者さんと医療者との間の信頼関係が大切です。高血圧治療の最大の目的は血圧を最適な数値にすることにより脳卒中や心血管病による死亡リスクを下げることです。高血圧治療の目的を患者さんによく理解してもらうこと、そのためには生活習慣の修正とともに必要な降圧薬をきちんと使用するメリットなどを患者さんに十分に説明していただく必要があり、自分も常に心掛けていこうと思います。もちろん患者さんの希望も聞かずに強制的に降圧薬を増やすことはあってはなりません、やはりお互いによく話し合って決めるべきであり、そこにはお互いの信頼関係が非常に大切だと思います。

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加齢や生活習慣以外に高血圧の原因がある場合

加齢に伴うものや生活習慣からくる高血圧を本態性高血圧といいます。それに対して特定の原因による高血圧を二次性高血圧といいます。二次性高血圧は高血圧患者さん全体の10%以上にのぼると報告されています。二次性高血圧の場合には特定の原因に対する治療をしないと降圧薬のみではなかなか最適な血圧まで下がらない場合があります。

代表的な二次性高血圧に原発性アルドステロン症という疾患があります。副腎という腎臓の上にある臓器からアルドステロンというホルモンが出ています。普通は体の水分の量などによりアルドステロンが分泌される量は調節されます。原発性アルドステロン症はアルドステロンが副腎からどんどん分泌され、血圧が上がってしまう病気です。高血圧患者さんの5~10%はこの原発性アルドステロン症が原因といわれています。年齢が若いにも関わらず高血圧の方、降圧薬をしっかりと使用していても血圧が下がらない方、採血でカリウムが低めな場合などでは原発性アルドステロン症が疑われます。疑う場合にはまずはレニンというホルモンとアルドステロンを採血で測定し調べます。検査の結果疑われる場合には、専門の医療機関にて副腎静脈サンプリング検査という精密検査を行なう場合があります。治療はミネラルコルチコイド受容体拮抗薬という薬を使ったり、副腎の手術をする場合もあります。

いびきをかく、昼間に眠気がある、肥満があるなどの場合には睡眠中に気道が閉塞し呼吸が止まってしまう睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。睡眠時無呼吸症候は高血圧の原因のひとつです。重症の睡眠時無呼吸症候群の場合には夜間にマスクをつけて気道を拡げる治療(CPAP治療)を行なうことで血圧が下がることも期待できます。

意外なところでは薬の副作用で高血圧になっている場合があります。代表的なのは非ステロイド性抗炎症薬、甘草という成分を含む漢方薬、グリチルリチン製剤などを長期に内服していると可能性があります。

終わりに

治療を受けているにも関わらず血圧が下がらない場合には何か原因があることが多いです。原因を見つけるには患者さんと医療者側がお互いに協力しあわないと分からないことが多いです。血圧がなかなか下がらない場合にはかかりつけの先生によく相談をしてみてください。

 

参考資料

高血圧治療ガイドライン2019

高血圧診療ガイド2020

 

 

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