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あなたの腎臓、働きすぎかもしれません。尿タンパクについて

[2025.07.06]

「血液検査で腎臓の数値は問題なかったので、わたしの腎臓は大丈夫」そう思っていませんか。実は大丈夫でないケースもあります。キーワードは腎臓の働きすぎと尿タンパクです。

腎臓の仕組みと働きについて

腎臓は尿を作ることにより体の老廃物を体外へ排出したり、体の水分量を一定に調節するなど重要な働きをしています。

腎臓には糸球体と呼ばれるものがあります。体の中を流れる血液は全て糸球体を通過します、このときに血液中の水分やブドウ糖などの小さい分子はろ過されて原尿(尿のもと)になります。全ての水分やブドウ糖などが尿として体から排出されると大変ですので、原尿から尿となる前に尿細管という部分で体に必要な水分やブドウ糖、電解質などは再吸収されます。結果として体に不要な分だけの水分や電解質などが尿として体から排出されます。この糸球体や尿細管を含んだものをネフロンと呼び、腎臓には約100万個のネフロンが存在しています。

腎臓の血液検査 クレアチニンとeGFR

血液検査で行われる腎臓の検査としてクレアチニン検査というものがあります。クレアチニンとは主に筋肉で作られる老廃物で、ほとんどは血液中から腎臓のネフロンを介して尿の中に排出されていきます。腎臓の働きが悪くなってくるとクレアチニンが尿に十分排出されなくなり、血液中のクレアチニンの量が増えていきます。このため血液検査ではクレアチニンの数値が高いほど腎臓の働きが悪いことになります。ただしクレアチニンは筋肉からできる老廃物なので、もともと筋肉の多い少ないの差が検査結果に影響します。そこで血液中のクレアチニンに年齢や性別を含めて計算したものがeGFRと呼ばれる検査項目になります。こちらは数値が少ないほど腎臓の働きが悪く、一般にeGFRが60を下回ると腎機能が低下しているとされます。ここで最初のお話に戻りますが、eGFRが60以上あるから安心とは言えないので注意が必要です。

腎臓の働きすぎにご注意を

腎臓が傷んでくるということは、腎臓に100万個あるとされるネフロンが傷んできて、正常なネフロンの数が減ってきているということです。正常なネフロンの数が減ってくれば、腎臓の働きが低下してeGFRも低下していきますが、話はそう単純にはいきません。傷んできた腎臓はブラック企業と化すのです。どういうことかというと腎臓の機能低下は命に関わりますので、ネフロンが傷んでくると残った正常なネフロンが普段以上の働きをするようになり、ある程度までは腎臓全体の働きは保たれます。「株式会社 腎臓」では体調不良のネフロン職員が出てくると、ほかのネフロン職員に休んでいるネフロン職員分の仕事もさせるため、「株式会社 腎臓」全体の業績は悪化しません、むしろ普段より良い業績をおさめることもあります(eGFRはこのため低下しません)。この状態を糸球体過剰ろ過と医学的には言います。しかし体調不良のネフロン職員がさらにどんどん増えていきますと、さすがに残ったネフロン職員ではカバーできなくなり「株式会社  腎臓」の業績は悪化していきます(eGFRがどんどん低下していきます)。これらのことから血液検査でeGFRの数値が良くても、「株式会社腎臓」は本当に健全な企業なのか、ブラック企業と化して必死になっているだけかは分からないのです。ではどうすれば腎臓の悪化を早期に見つけることができるのでしょうか。

尿タンパクの重要性

ここで重要になってくるのが尿検査です。特に腎臓の悪化の早期発見に有用なのが尿タンパクの有無です。タンパク質は分子量が大きいので通常は糸球体からろ過されず、尿中には出ていきません。腎臓にダメージが出てくると、タンパク質がろ過されてしまい尿中に出ていくようになります。このように尿にたんぱく質を認めることは、腎臓に何らかのダメージがあるということであり、ブラック企業と化した「株式会社 腎臓」において働きすぎのネフロンからのSOS信号にほかなりません。実際に腎臓が悪くなる経過として、最初に尿にタンパク質が少しずつ出てきます。治療をしないと徐々にタンパク尿は増えてきますが、ネフロンの頑張りにより血液検査では腎臓の数値(eGFR)に異常は認められません。さらにタンパク尿が増えていきネフロンの頑張りが限界を超えてくるとeGFRが低下してきて、血液検査で異常となります。血液検査で異常がない、尿タンパクのみを認める段階で何らかの治療を始めることが非常に大切になります。

また尿タンパクは腎臓だけではなく心臓や血管の異常を知らせるサインにもなります。実際に尿タンパクを多く認めるほど心臓や血管の病気の発生率が高くなり、心臓や血管の病気による死亡も増えます。

尿検査の注意点

運動後やストレスがかかっているとき、長く立っているとき、風邪などで熱があるときなどは腎臓に問題がなくてもタンパク尿を認めることがあります。これらは生理的タンパク尿と呼ばれ、病気ではありません。タンパク尿を認めた際に、これらの条件にあてはまる場合には後日体調の良いときに再検査を受けましょう。また通常の尿検査は試験紙法とよばれる方法で行われます。この検査は水の飲みすぎで尿がうすくなっていたり、脱水気味で尿が濃くなっている場合には結果に影響します。この影響を除くためには尿タンパク/クレアチニン比と呼ばれる方法での評価が望ましいです。

尿タンパクを認めた場合には

早期に腎臓の治療を行うことにより、腎臓の機能低下を抑える(ひいては透析にならないようにする)ことが期待できます。また腎臓の治療は心臓にも良い影響をもたらし心臓血管病の発生を抑えることにもなります。

以前にご紹介したSGLT2阻害薬はネフロンの働きすぎ(糸球体過剰ろ過)を改善します。SGLT2阻害薬での治療を開始すると初めは血液検査のeGFRが悪化します。これは今まで不調のネフロンの分まで頑張っていた正常のネフロンの仕事量を減らすことで、腎臓自体の機能が悪化するからです。しかし会社と一緒でブラック企業のままで猛烈にネフロンが働いているといずれは休職に追い込まれるネフロンが増えていき、最終的には会社としては成り立たず倒産します(腎臓でいえば透析になります)。SGLT2阻害薬で治療すると頑張っているネフロンの仕事が減るので、このまま働いてくれます。また完全に傷んでいないネフロンも復活していきます。最終的にはネフロンたちは永く働いてくれるようになります。もちろん腎臓の機能は徐々に低下はしていきますが、ブラック企業のまま無理矢理機能して最終的には悪化するよりは、明らかに長い期間腎臓の機能は維持できます。

尿検査を受けましょう。

もし健康診断や人間ドックで尿タンパクを認めた場合には、たかが尿検査と思わずに必ず医療機関を受診しましょう。また高血圧や糖尿病などで通院中の場合にも定期的に尿検査を受けましょう。糖尿病のある方はタンパク質の一種であるアルブミンが尿から出ているかが保険適応で検査できます。糖尿病の方はアルブミン尿の検査も重要です、くわしくはこちらもご覧ください。

 

 

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