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聴診器で分かること

[2018.08.23]

息が苦しい、咳、痰が出る、胸が痛い、熱がある、などの症状の時には胸の聴診が欠かせません。聴診することで何が分かるのでしょうか。

胸の音には心臓の音(心音)と肺の音(呼吸音)の2種類があります。呼吸音の聴診をする場合には患者さんに息を吸ったり吐いたりしていただきます。

〇呼吸音について

息を吸ったときにゴボゴボした音が聞こえる場合がります。教科書的には水泡音と言います。肺炎や肺水腫(肺が水分でむくんだ状態)になると聞こえることがあります。熱がある、咳が出る、息が苦しいなどの症状があり水泡音が聞こえる場合にはすぐに肺のレントゲンを撮ります。

息を吐いたときにチリチリとした音が聞こえる場合があります。特に背中で聞こえることが多いです。教科書的には捻髪音と言います(その名の通り髪の毛を捻じったときの音に似ているため)。間質性肺炎という肺が固くなる病気で多く聞こえます。間質性肺炎という病気は初期にはレントゲンでは分からないことも多く、捻髪音が聞こえないか背中を聴診することは早期発見にとても重要です。

息を吐くときにヒューヒューと音が聞こえることがあります。喘鳴といい気管支喘息発作のときに聞こえます。ひどい喘息発作の場合には聴診器を使わなくても聞こえますが、軽度の発作の場合には息を最後まで吐ききるところまで注意して聞かないと聞き逃すことがあります。また肺水腫の時にも聞こえることがあります。喘息と肺水腫では治療方法が全く違うため注意が必要です。

音がしない、音が弱いことが診断に役立つこともあります。気胸という肺に穴が開いて肺がつぶれる病気の場合には気胸になった方の胸の音が聞こえなくなります。また胸に水が貯まると肺が押しつぶされて音がしなくなります。胸が痛い、息が苦しいなどの症状で片方の胸の音が聞こえない場合には気胸や胸水を疑いレントゲンを撮ります。

異常な音がしないことが診断に役立つことがあります。肺炎の中でもマイコプラズマという菌による肺炎の場合には呼吸の音が正常なことがあります。レントゲンで肺炎の影があるのに呼吸の音が正常な場合にはマイコプラズマ肺炎の可能性も頭に入れておきます。

 

〇心音について

心臓の場合にはます音が一定間隔かどうか確認します。間隔が一定でない場合には心電図で不整脈の検査をします。聴診器をあてるとドットッ、ドットッ、と心音がします。この音の間にシュンシュンといった雑音が聞こえることがあります。心臓には血液が逆流しないように弁がついているのですが、この弁が固くなって間が狭くなったり、逆にゆるくなったりすると雑音がします。心臓弁膜症という病気です。心雑音がした場合には心臓超音波検査を行なうことが診断に非常に重要です。

 

もちろん聴診だけで全ては分かりません。日常の診療でも、聴診では大丈夫と思ってもレントゲンを撮ったら肺炎だったなどのケースも数多くあります。しかしながら聴診のいいところは患者さんの負担が限りなく少ないということです。これからも丁寧に聴診をしていこうと思います。

 

 

 

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